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中カツ!通信

「中カツ!通信」は中華圏歴19年を超え、湖南省出身の妻と娘と上海で暮らす野村が「中国で勝ちたい人」のために、「日々ちょっと活力を得られる情報」を、お届けするブログです。

第127回 新型肺炎状況8 活きるための欲とは?

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第127回 新型肺炎状況8 活きるための欲とは?


 みなさん、こんにちは。

日に日に増えていく感染者数、入国規制、イベント中止要請。世界経済への影響も増しており株価は下がり各企業からの悲鳴が聞こえてきます。弊社グループも武漢に拠点があり、数百名の従業員を抱えておりもちろん他人事ではありません。

 

前回の中カツ!通信の記事は、特に多くの方々から反響を頂きました。

第126回 新型肺炎状況7 不自由なのは中国?それとも日本?

 

多くの方から休校やイベント中止についても賛同をする声を頂く中で

 

「でも、感染しても死ぬわけじゃないんでしょ」

 

という反応もありました。確率的には確かに低いのですが、数値化された指標だけを見ていると時に感情のない無機質な理解しかできなくなります。

 

例え致死率が低かったとしても、

例え死んだ人が1人だったとしても、

 

その1人があなたにとって大事な人だったら、確率論で割り切れるでしょうか?

 

今回の新型コロナウイルス肺炎が発生してから、ニュース記事を見て涙することが幾度もあります。冷静に判断することは非常に大事ですが、それと数字だけ見て軽んじること、軽んじて他人の自由を奪うことは別のことだと思います。

 

確かにエボラ出血などと比べ新型コロナウイルスは現状、致死率が低い状況ですが糖尿病など持病を抱えている人、免疫が落ちている人は重症化するリスクが高いのも事実です。

 

実際に中国の最前線の現場では多くの医療関係者も命を落としています。「医者の不養生」と割り切れる状況ではありません。ウイルスが蔓延する中、高ストレスの状態でろくに休憩時間も取らずに、30日間連続出勤して治療にあたる医療関係者が数多くいます。

 

2月18日武漢市武昌病院の院長の劉智明さん(51歳)が新型コロナウイルス肺炎で亡くなられました。

 

武漢市の最初の発熱外来指定病院の院長として、新型コロナウイルス肺炎発生以来、劉医師は医療関係者全員を率いて現場で奮闘します。また劉医師の妻である蔡さんは別の病院のICU看護士長を務めており夫婦で疫病の最前線で戦っていたのです。

 

劉医者は患者からは「医術が優れているだけでなく、態度もとてもいい」と評判だっただけでなく、部下からも慕われており、殉職の際に部下たちが泣きながら「来世もあなたの部下になります」と言ったそうです。

(遺体が搬送される時に思わず駆け寄ろうとする同僚を別の医師が止める様子)


「万一の場合でも、救命のためにチューブを挿さないでくれ。」

自分の死を悟った際にもチューブを引き抜いた時に医療関係者への感染リスクが上がる治療をしないよう気を使うような医者でした。

 

2月7日に武漢市第三医院が発表した「医生患肺炎上了呼吸机,做护士长的妻子这样抉择」(医者が肺炎にかかり呼吸器をつけた、看護士長である妻の選択)という文章で夫婦のやり取りが記録されています。

 

1月22日午前4時、蔡さんは夫である劉医師から「着替えを送ってほしい」という電話をもらいます。指定病院になってから、劉医師は家に帰れなくなっていました。

 

蔡さん:「あの時はとても心配でした。こんな時間でまだ休んでいないのかと…」

 

そして翌日には夫が新型コロナウイルス肺炎で重症病棟に入ったことを伝えられます。当時、蔡さんの病院も発熱指定医院に選ばれ3日以内に院内で20名強の重病者を受け入れるための改造に大忙しで2日間は徹夜の業務が続きます。

 

合間を縫って夫である劉医師の様子を看にいくと夫の主任医師からは

「よくない、かなりよくない、どんどん悪くなっている。酸素飽和度が80を切ったこともあり、どうやっても上がらない」

 

これが何を意味するかは蔡さんにとっては明らかでした…

 

蔡さん:

「全てを投げうって彼のそばにいたいと思いました。彼に”私が面倒をみるよ”と何度も聞きましたが、夫の答えはいつも”不要”でした」

 

「私が一度、来てしまったら離れられなくなるとことをわかっていて、彼はずっと受け入れてくれなかったのだと思います。彼も医者です。自身の状態はよくわかっています。自身の主任医師には”万が一の時でも、チューブを挿しての救命医療はしないでくれ”と伝えていたそうです」

 

1月27日からは蔡さんの勤める第三医院でも重症患者の受け入れが始まります。新しく設定された肺炎専門エリアには14台の原産国も型も違う呼吸器が届きます。それぞれの呼吸器に必要な備品も異なるので蔡さんも町の衛生院、メーカーなど自身の知り合いにお願いして何とか使える状態を整えます。

 

重病者の状態は急変することが多いため各患者を1時間ごとに巡回し、酸素飽和度を計測する必要があり、看護士長である蔡さんは同僚が帰った後も残って仕事をしていたそうです。

 

蔡さんが劉さんへあてたWechatのメッセージ

 

「毎日2時に電話して。じゃないと心配だわ。夜も電話でないし」

 

「ショートメッセージは見られるの?」

 

「私は一緒にいられないの?」

 

「あなた、呼吸ができなかったら呼吸器をつけて!そうすれば少し楽になるから」

 

「怖がらないで、怖かったら私がそばに行くから」

 

(一時間後、返信が来ない状況で)

「あなた、頑張って!」

そして劉医師からやっと返信が来ます。

劉医師:

「昨日は一晩中のたうち回ったよ。どうしても酸素が上がらない。死ぬかと思った。酸欠、苛立ち、全身冷や汗。今朝は呼吸器をつけて、だいぶ良くなった。」

 

蔡さん:

「看に行こうか?」

 

劉医師:

「要らない」

 

その後、2月13日に劉医師の容態は突然悪化し14日は酸素チューブの挿入、17日には人工心肺ECMOによる救命措置が行われますが、すでに肺だけでなく心臓内にも多くの血栓ができており18日に逝去されます。

 

 もう一人、最前線で治療にあたり殉職された彭医師は更に若く29歳でした。

 

2020年2月1日(旧暦1月8日)に結婚を控え、すでに結婚写真も撮り終わっておりましたが新型コロナウイルス肺炎という国難の中、結婚を延期し医師として第一線に向かいます。

 

大晦日(1月23日)には、同僚が彭医師に

「大晦日なんだから奥さんと一緒にいてあげたら」とすすめるも

 

「私は若いですから、私が先に働きますよ」と、その他の家庭を持つ同僚に先に休みを取るように断りました。

 

結果、2月20日に彭医師はこの世を去ることになります。

 

まだ話せたときに彭医師は、同僚にこう言いました。

 

「引き出しの中にしまったままで送れなかった結婚式の招待状が、妻に対して一番申し訳なかった」

 

日本で報道されている陽性で自宅待機指示を受けていた男性は、この2人の医師の話を知った後でも

 

「ウイルスをばらまいてやる」

 

と居酒屋とパブをはしごしたでしょうか?

 

致死率という数字だけで「別に大丈夫じゃん」と軽く考えていたのではないでしょうか?

 

そもそも、この50代の男性は居酒屋とパブに行きたいという欲望がどれだけ強かったのでしょうか。

 

学術的な根拠はないものの、人間の三大欲求としてよく取り上げられるのが

「食欲、睡眠欲、性欲」


世界に先駆けて1月下旬から自宅待機指示や不要不急の外出要請がされている中国の人々は、どのように欲求を満たしているのでしょう?

 

まず睡眠欲は、満たされている人が比較的多いと思います。

 

自宅待機、自宅勤務ということがあると通勤時間もありませんので普段より遅く起きても大丈夫ですし、もちろん居酒屋で日を跨いで遅くまで飲むなんてこともありませんので時間的には余裕があります。

 

むしろ時間的制約ではなく、武漢をはじめとする現地の状況や、今後の経営状況を考えると眠れなかったり、昼間の運動不足で寝付けなかったりということは少なからず発生しています。

 

次に食欲ですが、食料の供給網が途絶えることはありませんでしたのでお腹を満たすために雑草を食べたという話は聞きません。ただ現代の先進国の多くの人間にとって食欲とはお腹を満たすだけでなく「美味しいもの」を楽しむこと。

 

その意味では、外出して美味しい料理を食べるという機会は激減しています。今でこそ店内で食事をできる店も増えてきましたが、1か月前は、お店を開く許可が下りていなかったりデリバリー用の料理すら制限されている状況でした。

 

第122回 新型肺炎状況4 今、上海で外出はできるのか?

 

デリバリーは頼めてもできたてを食べたいという食欲は満たされない中、外出もできず時間を持て余していた多くの人が自宅での自炊に時間をかけるようになりました。

 

特に流行っているのがパン、ケーキ、餃子や点心づくり。

 

2月24日の新浪財経のニュースによると、ECでの酵母は通常の40倍の売り上げを記録したとあります。他にも餃子の皮が7倍の売り上げになったりと粉から自身で作る人が増えたようです。

 

疫情期间宅出面点热 新网红酵母粉电商销量增近40倍

https://finance.sina.cn/stock/relnews/cn/2020-02-24/detail-iimxyqvz5284316.d.html

 

酵母が売れているのはオンラインだけでなく夕方に買い物に行ったスーパーでもレジ横にしっかりと置かれていました。

 

日本のクックパッドのように点心のレシピが掲載されているサイトは中国にもたくさんあり、参考にしながら作るのですが、そう簡単に外で売っているようなものはつくれません。

 

私の家内も多分に漏れず、炊飯器で作れるケーキやら、点心を作っては写真が送られてくるのですが、いつもお決まりの「出来は60点。でも味は美味しいよ」というコメント(笑)

 

写真を見てみると

(蒸す前)

 

(蒸した後)

チョコレートをいれる点心はよい見栄えに作るのが難しいそうです(笑)

 

ただ、ネット上を見てみると家内の作品は、まだましで数々の傑作が披露されております。

可愛い雪だるまの饅頭を参考に作ったら

春も間近?溶けかかった雪だるまになってしまったり

 

炊飯器で簡単に作れるはずのスポンジケーキは蓋についたままになってしまったり、

 

みんな大好き焼き小籠包も

油断をすると新メニュー?

地獄の業火焼き小籠包になってしまいます。

 

飽くなき食欲の探求、デリバリーコストが高い日本では中国以上に数々の珍料理がSNS上に溢れるかもしれませんね(笑)

 

自分で手間暇かけて作った料理は美味しさ倍増ということで制限された中でも食欲を満たすために頑張っているわけです。

 

また食欲といえば「中国人は四つ足のものならテーブル以外は何でも食べる」などと称されますが、今回の騒動となった華南海鮮卸市場では生きたコアラも売られていたといった報道もありましたが、あれはコアラではありません。

 

確かに「活树熊」というのは活きたコアラを表すのですが、2018年にオーストラリア領事館も広東で調査をしたことがあり、故意かわかりかねますが翻訳ミスで実際は竹ネズミという昔から食べられていた動物でした。


確かに動物園で、この竹ネズミがコアラとして紹介されていたら大クレームです。私自身はコアラもネズミにも食欲が湧かないことには変わりませんが…

 

更に話が少し飛びますがオーストラリアの動物2大スターのもう一つであるカンガルーは害獣として食用からペットフード用まで数百万頭単位で殺されているのに、容認しているオーストラリアの人から「クジラを食するなんて日本人は野蛮だ」と言われるのは非常に違和感あります。

 

最後に性欲ですが、最近私の親も中カツ!通信を読んでいるので深くは書きませんが、今回の巣ごもり生活で子供が増えるのではと予測されております。

 

コロナ(Corona)とはラテン語で王冠の意味で、今のクラウン(Crown)の語源でもあります。

 

2020年年末には多くのCrown babyが誕生するかもしれませんね。

 

人はいつかは死ぬものだと誰もが分かっていても、それが明日や来年かもと意識している人は少ないものです。

 

この世に生を受けたからには親に感謝し、一緒に過ごしてくれる家族や友人に感謝し、その感謝を子供たちにも引き継いでいってほしいと思います。

 

中カツ!通信はWECHATでのアカウント登記は漢字表記しかできないため「中通信」としております。

 

有名なスティーブ・ジョブズのスタンフォード大学卒業式のスピーチでもありましたよね。

 

「毎日を人生最後の日だと思って生きよう。いつか本当にそうなる日が来る」

 

 治療の最前線で「患者の活きたいという欲求のために」奮闘し人生半ばで亡くなった医療関係者のためにも、そういう医療関係者を増やさないためにも外出時間を減らして、家族と一緒に活きることについて考えて、安全になったらレストランや旅行に出かけて友人と大いに活きることを楽しみたいと思います。


本日も最後までお読み頂きありがとうございます。
 

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