にほんブログ村 経済ブログ アジア経済・中国経済へ
にほんブログ村 海外生活ブログ 上海情報へ
忍者ブログ

中カツ!通信

「中カツ!通信」は中華圏歴19年を超え、湖南省出身の妻と娘と上海で暮らす野村が「中国で勝ちたい人」のために、「日々ちょっと活力を得られる情報」を、お届けするブログです。

中カツ!通信 第257号 賞味期限切れ?上場1年で、〇〇ビジネスが廃棄まぢか?

■□■□■□■□■□■□■□■□■
中国で勝つための、
ちょっと活力を得られる情報をお届け! 
メルマガ無料登録URL
http://eepurl.com/c7GHF
□■□■□■□■□■□■□■

こんにちは。中カツ!通信の野村です!

昨年2021年6月に、ある2社の企業が競ってアメリカの証券市場にIPOを申請しました。

そのうち1社はソフトバンクのファンドも投資していた叮咚买菜。

2019年に中カツ!通信でも紹介いたしました。

おばちゃんのハートを掴み続けられるか?!生鮮の勢戦 叮咚(DingDong)买菜 2回目

我が家では、今でも叮咚买菜を愛用しています。

8月11日の発表によると2022年4‐6月期決算は、

売上が前年同期比42.8%増の66億3000万元(約1326億円)、Non-GAAPベースの純利益は2060万元(約4億円)となり、初の黒字化を達成しました。

上海ロックダウン時、叮咚买菜を買うために毎朝、多くの人が早起きして連打していましたから、この好業績も納得です。

生鮮の野菜や肉に限らず、冷凍食品、パン、ボトルコーヒー等、買えそうなものは何でも買っていたので、ロックダウン後もアイス等、生鮮以外も含めたネットスーパーの1つとして利用しています。

その叮咚买菜と競って2021年6月に米国ナスダックに上場していたのが、

「毎日優鮮」


2014年にLENOVOの元幹部が設立した毎日優鮮。

住宅密集地に「前置倉庫」と呼ばれる配送拠点を設置し、EC注文から30分‐1時間で生鮮食品を即時配送するビジネスモデルの先駆けでした。

上場までにテンセントを始め投資家から総額140億元(約2800億円)以上を調達し”資本の寵児”とも呼ばれていました。

上場時10.65USドルからスタートした株価は、まさに閉店時間が近づくにつれてタイムセールが行われる生鮮食品のように2022年8月26日時点では、0.125USドルと99%OFFまで落ち込んでいます。

それもそのはず、約1か月前の7月28日には、人事部がある部門の約300人向けにオンライン会議で即時リストラを伝える音声が流出したのです。

6月分給与も未払いと資金難に陥っており調達も間に合っていないという報道もされています。

告知前日には、配送拠点からも食材が既に撤去されていたとのことで、現在はミニプログラム上の表記も、1時間以内の配達から「最速で翌日配達」に表示が変わっています。

商品の中身も、かつての

「肉、魚、野菜等の生鮮品を、すぐに届けます!」

からは、ほど遠い加工済み食品や日持ちのする果物や野菜が、ほとんどになってしまいました。

資本の寵児といわれ、上場までしたのに約1年で資金難そして、おそらく上場廃止というのは、一体どうなってしまっているんでしょう?

個別企業としての毎日優鮮の経営自体がダメだったのか?


それともロックダウンを始め環境の要因が大きいのか?

もちろん様々な要因がかさなっていますが、私個人としては、

「このビジネスモデル自体が、そもそも非常に難しい」

と思います。

さきほど紹介した叮咚买菜であっても、2022年4-6月期のNon-GAAPベースで初の黒字で、今までは、ずーっと赤字だったわけです。アメリカの会計基準では、同期も赤字です。

また2022年4-6月期というのは、叮咚买菜の主戦場である上海のロックダウン(4、5月)と重なっており

・誰もスーパーに行けないので注文数激UP

・1回の注文でたくさん買うので客単価UP

・値引きしなくても売れるので原価率DOWN

・売れ残りロスも激減で原価率DOWN

・配送もマンション一括で注文当たりの配送費DOWN

と特殊な市場環境でした。

では、なぜ通常期だと、この”速達生鮮EC”はビジネスモデルとして難しいのでしょうか?

下記は、利益構造が分かりやすかった2021年第三四半期の叮咚买菜の収益費用図です。

一番左の濃い青が売上に対して、

左から2列目は商品原価で81.8%

左から3列目は履約費用(デリバリー費、倉庫の家賃等)で37.3%

この時点で売上に対して費用が119%と赤字確定です。

そこに広告費や管理費用という費用が重なっていき最終的には‐32.6%という数値に…

これが先ほどの上海ロックダウンの要因もあり2022年第二四半期には、商品原価が68.3%、履約費用23.2%と劇的に改善します。

ロックダウンが開けて、通常の市場環境に戻ったなかで、叮咚买菜の第三四半期数値が、どのように変化するかは注目ですね。

上場停止間際の每日優鮮だけでなく、叮咚买菜も含めて、この生鮮ECビジネスは、まだまだ安定して利益を稼げる状態になっていない現状は、ご理解頂けたと思います。

中国では生鮮EC以外にも、赤字でも資金調達を繰り返しながら、まずはユーザー数の増加、市場シェア率の向上を目指すビジネスは多く存在します。

多くのユーザー数を確保し消費習慣をつけて売上を増やしていくと同時に

・値引きを減らし粗利率を上げていく

・規模のメリットで仕入れ値を下げる

・規模のメリットで売上当たりの運営比率を下げていく

ことにより利益額を確保していく。

Luckin coffeeは典型事例で、最初は1人紹介するごとにコーヒー1杯無料だったのが、今では半額割引券が、たまに配られるくらいです。

ただ、生鮮ビジネスはコーヒーと違って、そもそもの粗利率が低く、生鮮だけにロス率も高いです。

また毎日、高級な海鮮や肉を買うわけではないので1オーダー当たりの単価も、それほど高くありません。

さらに「30分以内(や、1時間以内)に配達」という差別化ポイントを実現するために、テイクアウト(オフライン店舗)がない、每日優鮮や叮咚买菜のような業態では前置き倉庫の数も、デリバリーのドライバー数も、どんどん増やしていかなければなりません。

なので新しいエリアに出店するたびに

・生鮮商品の豊富さやお得な価格で新規客を獲得し

・購買リピート頻度をあげ、

・客単価を上げていくことにより

・ドライバーが1回の配達で、多くの注文を届けられるようにする

ということを繰り返しながら利益が出る体制にしていく必要があります。

現在では、リピート頻度が多い生鮮商品以外にも冷凍品、ザリガニ、PB等の単価も高く、粗利率もよく、廃棄ロスも少ない商品のラインナップが増えています。

ただ生鮮の品ぞろえが少なくなってしまうと、上海などの一線都市では、他のECスーパーというライバルに顧客が流れてしまいます。

そうなると、あくまでも「豊富な生鮮商品を、すぐにお届け!」という差別化ポイントで顧客を引き寄せて、他のモノも、ついでに購買してもらうという戦い方に限られてしまうのではないかと。

このデリバリーのみの叮咚买菜に加え、我が家で会員になっているのが盒馬生鮮とサムズクラブ(Sam's Club)

OMOの事例としても、よく取り上げられる盒馬生鮮はネットスーパー用の倉庫だけではなく、実際にオフラインで買い物ができる店舗があります。

また最近ではウォールマート系の会員スーパーのサムズクラブも出店を増やしております。

 

オフラインの郊外大型店だけでなく、ネットでの当日、翌日配達も行っています。ロールケーキは16個からのようにロットは大きく配送咲いて金額も99元以上と高いものの、割安ということでモノによっては、近隣の友人と共同購入したりしています。

我が家のように必要な商品の種類・価格・希望配達時間をニーズによって使い分けをしている家庭も多いです。

最近、ご近所さん情報をもとに盒馬生鮮の新しい業態に行ってきました。

その名も盒馬奥莱(アウトレット)

自転車で20分かけて到着してみるとショッピングセンター等の好立地に入っている盒馬生鮮とは違って、

「こんな場所にあるの?本物か?」

と思ってしまうほどの、地元の小さいスーパー立地と店構えです。

中に入るとアウトレットらしく値下げをアピールした内装。


お店の人に聞いてみると、基本的に盒馬生鮮では売れのこった商品を安くして販売しているとのこと。

盒馬生鮮は「生鮮は、当日仕入れの商品しか販売しない」というスローガンを掲げているので、そこで売れ残った商品や常温品でも賞味期限が近付いてきたものを、このアウトレットで販売しているそうです。

確かに、盒馬生鮮の時と比べて半額以下になっており、かなりお得です。



ただ、品揃えは、かなり偏っています。

肉や大豆製品のコーナーは、ほとんど何も残っていません…

この日、たまたま肉の売れ行きが、よかったわけではなく、そもそも仕入れ量自体が、需要予測をもとに発注されているわけでなく、盒馬生鮮で売れ残った量に左右されるので、このような欠品が常に起こるんですね。

せっかくお客さんがいるのに欠品しているというのは売上機会の損失でもありますし、それが日常的に起きれば

「せっかく買い物に行ったのに、お目当ての肉が買えない可能性があるんなら行かない」

と、買いたいモノがあるときの買い物場所候補から、外れてしまいますよね。

なので、この業態は、あくまで盒馬生鮮のロスを減らすための補完的な位置づけであり、盒馬生鮮が取り込めていない低単価層を積極的に獲りに行くための業態ではなさそうです。

このように各企業が日々、試行錯誤を続けながら、激しくしのぎを削る生鮮市場。

上場から1年ちょっとで毎日優鮮が、廃業カウントダウン状況にまで追い込まれてしまうのも納得です。

もちろん投資家や、働いていて給与未払い状態の従業員は、そう簡単に納得できないかないでしょう。

そして消費者の中には、先におカネをチャージしていた人もいます…

シェアサイクルを始め、「チャージするとお得!」という理由でお金を入れたものの、使わなくなるor使えなくなるというのは、よく聞く話。

安物買いの銭失い。

この言葉を学ぶのに何度も授業料を払っている自分への戒めも込めて、

生鮮食品の賞味期限の見極めだけでなく、自分が使うサービスについても、そのビジネスがまだ賞味期限中なのかは、しっかりと見極める必要がありますね。

 

今回も、最後まで、お読みいただきありがとうございます!

*****************

【Wechatでも配信始めました!

メールが迷惑メールに入る、
そもそも届かないという方、ぜひフォローお願いします!
第119回以降のログもご覧頂けます。

中活通信アカウント



野村個人Wechat ID

*****************
【無料メルマガ登録
ご登録頂くことにより
最新号を直接お届けいたします!
ブログに来て頂く手間が省け、記事更新の見逃しも防げます。
是非、ご登録ください。

メルマガ無料登録URL

http://eepurl.com/c7GHFL

******************

中カツ!通信 - にほんブログ村 にほんブログ村 海外生活ブログ 上海情報へ
にほんブログ村 海外生活ブログへ
にほんブログ村 経済ブログへ
にほんブログ村 ニュースブログ 海外ニュースへ

拍手[0回]

PR