中カツ!通信 第182号 日系企業も標的に。新人社員が実は密偵?!不正暴露番組315
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こんにちは中カツ!通信の野村です。
今年も緊張の3月15日がやってきました。
そう!
中カツ読者の方にはおなじみの消費者権益日です。
毎年この日にあわせて放映される特番(昨年はコロナの影響もあり4か月遅れの7月16日に放映)は、国営CCTVで人気番組の1つです。
消費者権益日の説明や過去の特番で不正を暴露された企業について、ご興味がある方は、以前の過去記事をご参考下さい。
①2019年3月17日
一年で一番怖い日?3月15日(消費者権益デー)
http://chuukatsu.blog.shinobi.jp/shichang/315
②2020年7月19日
中カツ!通信 第147号 あなたの企業は大丈夫?消費者に代わっておしおきよ
国として、いかに不正企業の取り締まりに力を入れているかをアピールする目的で制作、放映されていますが綿密な調査とくに潜入捜査の様子はエンターテイメント番組としても人気があります。
CCTVの公式サイトから観ることもできます。リンクは以下
https://tv.cctv.com/2021/03/15/VIDEd4INTzPCj8KWF9S9SbXn210315.shtml?spm=C55953877151.PHXsiQANZko2.0.0
人気番組だけに影響力も大きく、暴露された企業は放映中から一般市民の批判が殺到しブランドイメージが著しく低下するだけでなく、当局による立ち入り検査、販売停止措置などビジネスに大きな影響がでます。
そのため万が一、取り上げられた場合に謝罪文や改善措置を素早く発表すべく各企業担当者がは3月15日の放送を観ながらスタンバイしているのですね。
それでは今年、暴かれた9つの内容を順に紹介していきます。
1、オフライン店舗で顧客の同意なく、顔データ(年齢、性別、感情)を収集。
中国でも個人情報は顧客の同意なしに収集することは違法です。オフライン店舗に入った瞬間に顔データを取得し来店回数や会員属性と結びつけることができます。
データベースはチェーン店として共有されており、他の支店に来客した顧客が自分の店に来たのもわかるとのこと。
お店側としてはVIPが来た時にすぐに対応できたり、窃盗などのブラックリスト者が来た場合にアラームを出すこともできるそうです。
これらのデータが取得されているだけでも嫌な気分になりますし、更に恐いのはこれらのデータが裏で二次利用されることです。
③2019年12月の中カツ!通信
「第113回「AI時代の顔が売れるって?!」5000枚顔写真が10元で。」
https://mailchi.mp/4e86255e987c/21-1372371?e=[UNIQID]
でも書きましたが、顔情報以外に購買を含む行動履歴までセットで売らる可能性もあります。
一昔前に個人データ流出対策として
「オンラインで買うと記録が残るから、できるだけリアル店舗で現金で買う」
という話を聞いたことがありますが、もう逃げ場は無くなってしまいましたね…
2、人材紹介サイトへ提出した履歴書の流出
中国の人材紹介サイトでは求職者が企業を検索できるのと同時に、企業側も欲しい人材条件を設定して求職者の履歴書をダウンロードすることができます。
履歴書の値段もランクがあり学生なら40元、ホワイトカラーなら60元、名門大学卒で業界経験があり年収30万元(約500万円)以上なら100元など値付けされています。
利用企業はダウンロードした履歴書の秘密保持義務があります。一部の悪徳業者は人材を採用したい企業を装って登録し履歴書を集めたうえで、SNS上で再販売しているのです。
人材を探している企業が、こういった再販業者から購入する以外に、詐欺にも使われているとのこと。
通常は知らない番号からの着信にでなくても求職中は
「自身に興味をもった会社からかも?」
と出てしまうことに加え、自身の履歴書情報が把握されている状態のため詐欺に引っかかりやすいとのこと。
3、メモリクリーンAPPが携帯内情報を裏で吸い上げていた
「携帯の動きが重いのでメモリを軽くしましょう」という広告でAPPをダウンロードさせる。実際には大したメモリ削減効果はなく裏で携帯内の情報を送信していたというもの。リテラシーの低い老人が多く、中には類似のソフトを4つもダウロードしてしまっているケースもあり。
4、実質的に禁止されている医療関係の広告を掲載していたネットブラウザー
アリババも出資しているUCブラウザーや360搜索などの検索ソフト上の広告欄に、ブランド名を載せずにダイエットや糖尿病に効果がある商品があるなどと表示をしSNSへ連絡させるように誘導して販売をするという違法な広告出稿を広告会社が「ギリギリ違法でない」と販売していた。
5、ヒツジに人体に有害な禁止されている薬物を与えていた
脂肪分を減らす瘦肉精という薬物をヒツジの値段を高く売るために与えていた。検査の時は薬を与えていないヒツジを選んで発覚を逃れていた。人体に残留する有害物質で複数の地域に出回っている。
これで羊肉は一時期、需要が落ちると思います…
6、廃鉄を再加工して基準に満たない鉄鋼として販売していた
これは内部告発案件。廃鉄を再加工して基準に満たないまま検査証を偽造して販売していたのを記者が張り込み、ドローンまでつかって暴いた案件
工場内を撮影するのに自撮り棒を使っている場面は臨場感があるが、これを撮影しているカメラマンがいるわけなので、それでバレたりしないんですかね(笑)
内部告発者は会場にも登場。毎年、多くの案件が消費者だけでなく内部の密告から調査が始まっているのです。
7、高級時計の修理がボッタくり
本来であれば無料修理の対象である磁気の影響での動作異常を6つの都市の高級時計修理屋にもっていったところ無料で対応してくれたのは1軒だけ。あとは他の部分が壊れているから部品を変える修理が必要ということで数百元から2000元を超える修理費を請求。
たちが悪いのは実際には部品を変えていなかったり、修理をするときに逆に壊してしまったりという修理屋があったこと。
確かに素人が高級機械時計を開けてみるなんて、まず、ありません。また高級時計を持っている人だからお金も持っているのだろうと足元をみられてボッタくろうとしているんでしょう。
8、フォード車、設計ミスでギアボックスが錆びる問題を放置
「ギアボックスが錆びたのはユーザーの責任」ということで設計ミスをかくしていた。設計ミスのため変えても同じ問題が何度も起きるため、ユーザーはそのたびに修理費を払わされていた。
長安福特(フォード)は翌日SNSのWeibo上で謝罪文を発表しました。
3月20日時点では長安福特(フォード)の自社HP上のNewsには同様の発表が見当たりません…
https://www.ford.com.cn/newsroom//
SNSだけの謝罪発表というのはブランドダメージコントロールとしては理解できますが、誠実さが足りないように感じてしまいます。
9、日産インフィニティのギアボックスの度重なる故障に加え、口封じととれる協議書をユーザーに強制
こちらもギアボックスの故障。多くのユーザーが同じ故障を経験しており、その故障率はオーナーのチャットグループ500人の中で200人という高さ。
中には3年で3回も同じ故障というユーザーも。3回までは無料で交換してくれるものの、修理保証が切れると高額の修理費を請求される。
ユーザーがクレームをいうと、そのユーザーの怒り具合など明確な基準がないまま2年から20年の延長保証期間を与えていた。逆にクレームをしてこない人には保証延長はなしという不公正・不誠実な対応がされていた。
同じくカスタマーサポート業界の人間としては、20年という超長期の保証を勝ち取ったユーザーはどれだけの熱量でクレームをつけたのか気になるところです。でも20年は乗るかもというくらいの愛車精神をお持ちなんでしょう(笑)
ただ延長保証も、無条件でユーザーに付与されたわけではありません。
協議書があり
「メディア、SNSなどに書き込んでインフィニティの経営に影響を与えないこと」
「この協議をもって全部解決したこととして、直接、間接的な損失や損害を請求する権利を放棄する」
という内容を保証延長の条件としてユーザーにサインさせていたことが、あわせて問題に。
インフィニティは3月15日当日の夜に自社HPとSNS Weiboに声明を発表。そして翌日16日にも追加で対応策を公開しています。
上記はインフィニティHP、下記はSNS
315に取り上げられれないのが一番ですが、取り上げられたらこのように迅速に対応して炎上が広がるのを防ぐのが大事です。
以上、今年の315で取り上げられた9つのテーマはどうだったでしょう?
自社でなくても同業が取り上げられていると消費者からは
「あなたの企業も同じようなことがあるんじゃないの?」
という目でみられますのでカスタマーサポート部門での回答対応策の準備は必要です。
また、逆にチャンスととらえ
「弊社では〇〇(暴露された不正)が起こらない体制ですので安心してください!」
とアピールすることも可能です。ただし本当にないのか細心の注意が必要ですが…
それにしても毎回の315で驚くのが記者の内偵調査のレベルの高さ。決定的な証言を集めるのは相当、困難なはず。
その答えの一端がわかる動画が同じくCCTVの公式SNS上で公開されていました。
動画のリンク【https://haokan.baidu.com/v?vid=11462548835682447572&pd=bjh&fr=bjhauthor&type=video】
実際に潜入調査をしていた老Kという記者は、中古車売買プラットフォームの不正を暴くために営業マンとして入社しました。
ただ下っ端の営業マンでは機密情報に触れられないということで、情報をゲットするべく出世しようと仕事をがんばったところ、どんどん出世して会社のNo.2にまで上り詰めました。
給与も記者としての額を超えて、部下も十数人でき居心地はよかったそうです。実際に目標としていた内部情報もゲットすることができたとのこと。
逆に記者を派遣していた上司は、このまま記者を辞めてしまうのではと心配して毎日電話をかけてきたそうです(笑)
このようなスパイ顔負けの長期にわたる潜入取材があって毎年の番組が成り立っているんですね。
SNSがこれだけ発達した時代、不正を隠し通すのは至難の業です。
やはりビジネスは顧客に誠実でなければなりません。
ただ自身が知らないところで不正が起きているかもしれません。
急に優秀な調査が得意な中途社員が入ってきたら、それは何か不正がある知らせかも知れませんよ(笑)
今回も最後までお読み頂きありがとうございます。
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