中カツ!通信 第207回 1年で約1500店舗出店、やり手の「銭おばさん」钱大妈とは?
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中カツ!通信 第207回 1年で約1500店舗出店、やり手の「銭おばさん」钱大妈とは?
こんにちは、中カツ!通信の野村です。
最近、中国で増えているチェーン店と言われたときに、どんなブランドを思い浮かべますか?
「Luckin' coffeeラッキンコーヒー?」
「盒馬生鮮フーマー?」(アリババ系の生鮮スーパー)
「Relx?」(電子タバコ)
など,ネットをフル活用したビジネスや、新しい商材のブランドを思いついた方も多いのではないでしょうか?
本日、紹介するのは
この1年ちょっとで約1500店舗を開き30数都市で3500店舗を超えたブランド
2019年には10億元(約170億円)近くをシリーズDで調達した企業
です。
2012年に設立した、この企業の名前は钱大妈(銭おばさん)そして看板商品は豚肉
キャッチフレーズは「不卖隔夜肉」
つまり「宵越しのお肉は売りません!」
という新鮮さをアピールしたものです。
そして、このキャッチフレーズを裏付けるのが、毎日のタイムセール
19時から10%オフの値引きが始まり、30分毎に10%ずつ下がっていきます。
21時には半額(50%オフ)に突入し、
23時には90%オフ、
そして23時半には無料宅配!
確かに、これなら前日の食品を持ち越すことはできないですね!
「信頼できる新鮮さを求める消費者」と「お買い得商品が大好きな消費者」の両方が来店したくなる仕組みがあります。
さて実際はどんな人が買い物に来ているのか家の近くの钱大妈に行ってみました。
タイムセールが始まる前の18時半
お店の中はガラガラですね…
この時間は夕食の買い物も終わっていて、すぐ隣の市場では、すでに店じまいが始まっています。
钱大妈の商品棚も、かなりスカスカ
こんな商品がない状態ではタイムセールが始まっても、そんなに人が来ないのでは?と心配になります。
ところが20時50分、半額時間帯まで10分
に来てみると、店内には活気があふれていました!
肉のコーナーには手に商品を2つ、3つと持っているものの、動かない人達がたむろっています。
そうです皆、21時になるのを待っているのですね(笑)
5分前になると、お店は満員となり会計の行列ができ始めました。
でも、まだ買わない(笑)
私も肉汁がでてしまっている鶏むね肉を手にとりながら一緒に並んでみます。
この値段を他の盒马生鲜や叮咚买菜といった宅配のものと比べてみます。
盒马生鲜
叮咚买菜
2つは冷凍品なので正確には比べられないものの、半額だったら間違いなく安いですね。
並んでいる時に後ろのおばちゃんに「昼間も来るのか?」と聞いてみると
「昼間は高いから来ない!夜と朝の安い時だけ来る」
「朝は時間割引じゃなくて安い特価の商品がいくつかあるのよ。野菜で肉はないけどね」
「夜は安いけど、欲しいものが残っていない時も多いから、昼間は隣の市場で買ったりするわ」
とのこと。
この辺りは宅配だけでなく、道路の向いは野菜、肉市場、隣は中型のスーパーということでライバルがたくさんです。
同じ顧客でも状況によって消費行動を変えるというJOB理論の典型みたいな状況ですね~
おじちゃん、おばちゃんの声で騒然とする中、やっと自分の会計の番がまわってきて、店長?のような人に
「こんな割引きで儲かるんですか?」
と聞いてみると
「半額で儲かるわけないでしょ!40%オフだって儲からないし」
と不機嫌そうな声であしらわれました。それでもめげずに
「何時までやっているんですか?23時半になったら本当に無料になるんですか?」
と聞くと、今度はキレ気味で
「うちは21時すぎで終わりだ!」
という予想外の回答が。
もう、これ以上聞ける雰囲気ではないので店をでて、肉を買ったおばちゃんにどういうことか聞いてみると
「21時半になる前には、ほとんどないし22時には電気消えているね」
「23時半の商品無料で宅配?そんなことするんなら(店員が)自分で持って帰るよね。何で無料のものを配達までして更に疲れなきゃいけないの(笑)」
仰る通りですね…
念のため90%オフ10分前の22時50分に見に行ってみると、さすがにしまっていました。
開店まもない翌朝7時過ぎ
普段は野菜なんて買いに行かないのに深夜から朝から一日で3回も4回も自転車で出ていく私に、いつものことながら妻もあきれています。相場観とか鮮度を見てもらいたかったので一緒に行こうと何回も誘いましたが断固拒否でした(笑)
普段の出勤より1時間も早い日曜の朝7時
マンションの下では日曜恒例の青空市場
钱大妈の向かいの市場も賑わっています。
そして钱大妈はというと
こっちも店内は昨晩に負けず劣らず30㎡くらいの店内にはおじちゃん、おばちゃんで混みあっています。
昨日はスカスカだったら棚にもお肉、魚などの商品がビシッと並んでいます!
でもレジに並んでいるのはトマトだけを持っている人…
そうです!
今日の特価はトマト、カリフラワー、キュウリ、シイタケ!
この特価商品だけを買っているお客さんが多いんですね~
おばちゃんたちの品定めでのこった、すこし傷のついたトマトを拾い集めて、カリフラワーって、こんな乾燥した感じなんだっけ?と思いながらもレジに持っていきます。
トマト3個で50円以下、カリフラワー120円以下
どっちがお得なのか?
そもそも安いのか?
私には判断つきませんが、多分おばちゃんが手に持っていた率からするとトマトは、お得なんだと思います。
でも、こんなお買い得商品の猛者達が、むらがる業態で儲かるんでしょうか?
ネットで調べてみると実は全てが順調というわけではないようです。
この钱大妈の店舗の多くは加盟店でして、加盟店の中には多額の損を出して数か月で撤退というオーナーも多いとのこと。
急拡大の钱大妈は企業価値はすでに100億元を超えると推定され、2021年末には香港にIPOするのではと噂されています。
毎日、売切ることで廃棄率を減らしつつ、お客さんを集めるという手法に加え、現在ではミニプログラムやチャットグループでのOMO対策も行っており企業本部としては利益を拡大しています。
ただ仕入れる加盟店側としては、ある一定以上の量を決まった価格で仕入れて指導価格で販売し19時以降は強制的にタイムセールなので、毎日商品を売切ることはできるものの売れば売るほど損をするという循環を抜けられず閉店という店舗が少なくないようです。
都市情報サービスの58同城で検索してみると確かに上海でも10件近くの
「店舗譲渡します」という書き込みがありました。
食の都、広州からスタートした钱大妈。
加盟店も当初は新鮮さとタイムセールのお得さで、近所では瞬く間に評判になり野菜肉市場の中に開店することを禁止されるほどでした。
ただ投資機関から資金を受け加盟店を急速に拡大していく中で、当初は半径500m以内には出店しないというルールが250mに縮まります。
ここからは予想ですが、出店を加速させるために本部の出店審査基準も当初に比べ甘くなり本来であれば、この周辺居住者数では採算が微妙だと思う物件であっても出店許可を出してしまうようなことが起きているのかもしれません。
本部としては加盟店が増えれば、加盟金が入ってくるだけでなく、本部から加盟店の商品販売額も大きくなります。毎日、一定量を仕入れることは義務になっており毎日売り切れるので本部としては確実に利益を確保できます。
「肉を切らせて骨をタツ」とは、
自分自身も傷つく覚悟をして、相手により大きな打撃を与えることのたとえです。
損をしてでも「肉を売切って、お店が目立つ」、そしてお客さんを引っ張ってくるという钱大妈の戦略があったからこそ、ここまで成功してきたのは事実。
ただ加盟店との関係で
「加盟店に身銭を切らせて、本部は香港株式市場に立つ」
というのは長期的なWin-Winの関係とはならないですよね。
最終的には自分たち企業自身がタイムセールで買い叩かれないためにも、加盟店出店のスピードを抑えてでも本部、加盟店、消費者の3者が満足となるモデル実現が必要でしょう。
加盟店が満足できているのかどうか、今後も21時過ぎに帰宅の時は、店長の機嫌が良いか悪いかをチョクチョク覗きに行きたいと思います。
本日も最後までお読み頂きありがとうございます。
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