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中カツ!通信

「中カツ!通信」は中華圏歴19年を超え、湖南省出身の妻と娘と上海で暮らす野村が「中国で勝ちたい人」のために、「日々ちょっと活力を得られる情報」を、お届けするブログです。

中カツ!通信 第186号 文系出身者は発展の邪魔?!人民銀行の論文

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こんにちは中カツ!通信の野村です。

SNS微博(Weibo)のホットな話題ランキングトップに気になるものを見つけました。

「文科生太多会影响国家发展吗? 」

文系(出身)の学生が多すぎると国家の発展に影響するのか?

この2億もの注目が集まっている話題、文系出身の私自身としても見過ごせません。

ことの始まりはというと、中央銀行である中国人民銀行が発表した

「关于我国人口转型的认识和应对之策」(我が国の人口転換に対する認識と対応策)

http://www.pbc.gov.cn/yanjiuju/124427/133100/4214199/4215384/2021032618390757190.pdf

という論文に書かれた内容です。

全22ページにわたるこの論文は、中国人民銀行研究所に所属する4名の博士によって書かれたもので、

「人民銀行の立場を代表するものではない」

と注釈されています。

ただ、メディアやSNS上では「中央銀行が、」という表現がされていますので、今回の論文も

「人民銀行の意見であり、政策発表前の予告」

と、真剣にとらえて行動を起こしている人が少なからずおります。

実際にある業界の株価は、いくつもの企業がストップ高になりました。

では、どんな内容が書かれていたのでしょうか?

乱暴ながら私なりに内容を大雑把にまとめてしまうと

社会の発展にともない出生率と死亡率の関係に変化が起こる。

多産多死→多産少死→少産少死となっていくなかで、

人口総数も低増長、加速増長、増長減速、低速増長

と変化していく。


その過程で人口ボーナス、少子高齢化など社会は大きな影響をうける。

中国は一人っ子政策などの影響もあり、人口転換が他の国よりも
早く社会に大きな影響を与える。

だから早く様々な手を打たなければいけない。

という感じです。

そして、その具体的な対策提言として

1、ふたりっ子政策という出産制限の廃止

2、貯蓄と投資の重視

3、養老改革

4、教育と科学技術の進歩

が書かれております。

1、ふたりっ子政策という出産制限の廃止

については、今年の秋には政策変更が行われ出産制限がなくなるのでは?
などの期待から粉ミルク、子供服、幼稚園などの企業株価が上がり、
贝因美、威创股份、安奈儿を始めとして複数の企業は
ストップ高まで買われました。

さすが経済の番人、中国人民銀行の影響力…

そして1、と同様にネット上で議論を巻き起こしているのが

4、教育と科学技術の進歩

の中の以下の表現。

「东南亚国家掉入中等收入陷阱原因之一是文科生太多」

「東南アジア国が中所得国の罠に陥っている原因の一つは文系学生が多いからだ」

だから理系教育を重視すべきだ、という提言です。

この表現にネット上で多くの賛成派と懐疑派が熱い議論を交わしております。

賛成派の1つを紹介すると

https://weibo.com/xiangligang?refer_flag=1001030103_&is_hot=1

1、一部の文系が受けた教育は「よく働き、生きて行こう」ということではない。社会が正常、安定していると彼らはつらいのだ。彼らが必要なのは暗黒、悲惨といった彼らが社会の良心を演じる場面なのだ。国家が発展したら彼らは批判精神を発揮する機会がなくなってしまう。

2、文系の一部の専攻、例えば法律などは社会に問題があり、多くの訴訟があってはじめて生き残っていくことができる。当然、社会の発展には不利である。

4、韓国ではかつて法律を勉強する学生が多くなり、法律の専門家の職からあぶれた。彼らは日常的にデモ行進を行い、社会不安を招いた。

上記3つを含む7つを挙げたあとに

「なので、理系を発展させ、技術を多く学び、文系は趣味や補佐的な学習とすることが望ましい。大量の文系学生を育てることは、確かに社会に害をなす

とまとめています。

もちろん、これは過激な一部の、そのまた一部の方の意見ですが、文系の法学部政治学科出身者としては心が痛みます…

一方、論文の主張に懐疑派の意見としては、

・そもそも文系と理系の境目が明確でなく、この表現は雑で不用意

・東南アジア諸国では製造業の高級技術職の需要が先進諸国や中国と比べて少ない。 また理系の学生の方が大学院進学率が高いなど就学時間が長くなる傾向がある。効率的に有利な職を得るための手段として学部選択をすると理系が相対的に少なくなる。

 理系が少ないから発展できなかったのでなく、発展できない環境だから理系が少なかったというように因果関係が逆なのである。

・フィリピンの理系学生はアメリカより比率が多い。理系の学生数は関係ない。

・文系の学生が多すぎるのではなく、文系の学生の質が欧米に比べて弱いんだ。

・弁護士、ファンドマネージャーなど高給の職業は文系出身者がおおい。年収数億円の高給エンジニアもいるが一般的な理系出身者は給与も少ない。市場の待遇制度自体に変化がないといけない。

など意見があり、どれも一理あるなぁと感じます。

個人的には、私も懐疑派です。

現在の複雑かつ変化が速い社会では20代前半の学部が理系だったか文系だったかの重要性は下がってきていると思います。

ネット上には小学校の基礎的な内容から世界の一流大学の名教授の授業まで低コストで、自分の都合のよい時間帯を利用し、勉強することができます。

昔のように時間、場所、金銭を理由に勉強をあきらめることは、先進国では少なくなってきているのです。

人生100年時代の今、最初の20数年の選択で「オレ、文系だから」とレッテルを自他に貼って生きていくのは非合理的ですよね。

かの鄧小平が引用した四川の農村に伝わる諺があります。

「不管黄猫黑猫,捉到老鼠就是好猫」

「黄色い猫であれ、黒い猫であれ、鼠を捕るのが良い猫である。」

(勉強してみたら”白猫”ではなく”黄猫”ことに初めて気づきました!)



今回の問題になぞらえてアレンジすると

「文系だろうが、理系だろうが、しっかり勉強して社会に貢献するのはよい学生である。しかも、今から勉強しても遅くないよ!」

という感じでしょうか。

ぜひ、過去にとらわれず一緒に新しい分野も積極的に勉強していきましょう!

今回も最後までお読み頂きありがとうございます。

 

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