第145回 テンセントが2.4億円ダマされた古くてホットな手法とは?!
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第145回 テンセントが2.4億円ダマされた古くてホットな手法とは?!
こんにちは。中カツ!通信の野村です。
これから中国でビジネスを始める人から、
「中国で日本人は騙されるんですよね?」
と、聞かれることがあります。
騙されないとは言い切れませんが、日本でダマされることもありますし、中国人だってダマされます。
日本人が相対的に豊かであった時代はターゲットにされることは多かったかもしれませんが、今は中国人のお金持ちの方が目立っていますから幸か不幸かダマされる確率は減っているのではないでしょうか?
先週、話題騒然となった詐欺事件の被害者は、あのテンセントです。
Wechat、QQで有名なテンセントはアリババとならび中国を代表する世界時価総額7位の超大手企業です。
そのテンセントが1600万元(2.5億円)もダマされたのは老干妈という食品企業のハンコを偽造した3名だったのです。
この詐欺事件がここまで話題になったのには、いくつかの要因があります。
まず老干妈ですが中国最大の辣椒酱(ラー油)メーカーであり、国民食ともいえる有名商品で、もちろん我が家の冷蔵庫にも入っています。
ラー油といっても日本で餃子につけるラー油ではなく固形物が50%以上の、ご飯や麺にのせる「食べるラー油」ですね。
中国国内だけでなく日本をはじめ世界30国にも輸出されており世界の華僑の食卓を支えている商品なのです。
老干妈も年収が50億元(約750億円)を超える大手企業ですが、「広告を打たない、上場をしない」ということでも有名です。パッケージのお母さんは創始者の陶さんで今は白髪も増え、高そうな帽子が似合う貴州省の人民代表でもあります。
老干妈のマーケティングマネージャーを装った容疑者は2019年3月にテンセントと偽造したハンコで1600万元(約2.5億円)の広告契約を結びます。
契約にもとづきテンセントでは2019年4月から12月まで様々な広告活動を行うのですが広告費が支払われないことにしびれを切らし、深センの南山区の裁判所に提訴し、裁判所を通じ老干妈の1600万元の資産凍結がされました。
事態が一変したのが6月30日、老干妈の責任者が「テンセントとの間に一切の契約関係がない」と発表したのです。
ダマされたと気付いたテンセントは、微博で「事件の関連情報を提供した方に、自社購入した老干妈1000本をプレゼント」と発表します。
そして事件は急展開していきます。
7月1日には貴州省貴陽市公安局から容疑者3名を逮捕したとの発表がなされます。
「大企業テンセントがダマされた!」
「支払い催促もせずに1600万元の資産凍結申請をだした」
と、普段は覇権主義の象徴ともみられている大企業の失態にネットではお祭り騒ぎとなり、テンセント自体も大手動画プラットフォーム、Bilibiliの自社アカウントで自嘲動画をアップします。
https://www.bilibili.com/video/BV1mi4y1G78L?from=search&seid=5751564386630677705
アップされてから4日間で既に700万回以上再生されている、この自虐自嘲的な動画によりテンセントとしては世間のテンセントに対するイメージを回復する狙いがあると思われますが
弾幕上は
「老干妈に謝罪しろ!」
「自分の愚かさが招いたことを可哀そうなフリするな」
などラー油だけに辛辣なコメントでうめつくされております。
ただ、動画としてはとても面白いので中国語が分かる人は、ぜひご覧ください。
そしてコメントを寄せているのは、一般ユーザーだけでなくネット大手のアカウントからお祭りを盛り上げる(傷口に塩を塗る)投稿が多くされています。
アリババ系のタオバオのアカウントからは
「今日はパパがお小遣いくれたよ。みんなにラー油を買ってくれたよ」
同じくアリババ系のデリバリー大手饿了吗(elema)は
「楽しいお食事を!」
そしてユーザーのコメントには「早く老干妈をデリバリーしてきて」
携帯大手のシャオミー(小米)は、
「夜はオカユ作っておくから、ラー油もっておいでよ」
地図、ナビの大手である高徳は
「おバカなペンギンちゃん(ペンギンはテンセントのマスコット)、次回ラー油が食べたい時は私が本物を買えるようにナビしてあげるから」
もうネット企業だけでなく車メーカー、大学、通信会社、銀行まで続々と皮肉たっぷりのコメントを寄せてきており、ここからまた問題発言がでて、別の炎上に飛び火するのではと、ヒヤヒヤしてきます。
このコメント欄で広告、抽選活動をおこなう会社まででてきて
ある電動バイクの会社は
「この投稿への”いいね”が1万を超えたら3台を、10万を超えたら5台を抽選でプレゼントします。」
との投稿についた“いいね”の数は25.8万を超えています…
ビリビリ動画内だけにとどまらず微博(Weibo)でも、この話題に便乗して自社アピールをする会社が続出しており、
アリババ系の決済プラットフォーム支付宝は、
「偽の印鑑がなくなりますように」
とのコメントに加え、自社サービスがブロックチェーン技術を使って、偽造ハンコや偽契約書の問題を解決しようとしていることをアピール。
テンセントが1000瓶の老干妈(ラー油)を用意したことに便乗して、同じく深センの企業である肛泰は痔の薬をアピール。
「お隣さんが1000瓶のラー油を用意したと聞いて、黙って見過ごすわけにはいきません。(中略)ネット産業従事者の菊花を守るため、肛泰も立ち上がります」
テンセントを象徴するペンギンの絵を商品に重ね、
「ラー油の殺傷力には、肛泰の治癒力で抵抗しましょう!」
もう本当にお祭り状態になっているわけです(笑)
それにしても偽造ハンコをつくって老干妈のマーケティング部に成りすました3人は何の利益のために犯行におよんだのでしょうか?
広告費を老干妈から横領するのであればともかく、実際に広告活動は行われているわけで、彼らのポケットに入るわけではありません。
記事を調べてみると、広告契約をしたときにキックバックとして、ゲームで使える通貨がもらえたそうです。それを中古市場で販売して儲けたというのですが多く見積もっても3人で100~150万元(1500~2250万円)とのこと…
1600万元(約2.4億円)という額の犯罪を実行する見返りとしては少ない気がしますね。完全な部外者なのかは調査結果を待つ必要がありますが、契約を結び数か月の広告が展開される間もテンセント側にバレずにやり通せるだけのマーケティング部としての対応ができていたのなら、真面目に働いていてもそれなりの給与をもらえそうなものです。
2018年にも電気自動車で有名なBYD(今、日本ではマスクで有名?)をよそおって30以上の広告会社に11億元(約165億円)の不良債権をおわせた事件がありましたが、やはりお金を持っている有名企業の名前を出すと信用してしまうのでしょうかね。
そして今回の事件で最も得をしたのは、間違いなく老干妈です。
検索指数は一気に上昇し、EC2番手の京東では一時期品切れになるほど売上が増え、同じく大手ECの蘇寧でも7月1日の夜に228%増加の売上を記録したそうです。
公安からは老干妈は1600万元の広告を支払う必要はないとされており、それに加え今回の騒動で1600万元の広告以上の露出効果があったことは間違いありません。
今回のことは、テンセントにとっても教訓になったと思います。
「広告を出さない、あの老干妈から、1600万元の注文がキタぞー!」
と盛り上がったのでしょうが、そんなに甘い話はなかったと。
老干妈(ラー油)だけに
中カツ!通信を装った人が、どこかの広告会社と契約して私の知らないところで大規模な宣伝活動をしてくれないかなぁと妄想をしてみるも、そもそも偽造されるハンコも契約書もありませんでした(笑)
急にフォロワーが増えたら、何かを疑うことなく皆さんが今まで以上にシェアしてくださったと純粋に喜べる私って幸せですね!
本日も最後までお読み頂きありがとうございます。
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