中カツ!通信 第195号 ECセール618はオオカミ少年と化したのか?
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こんにちは、中カツ!通信の野村です。
中国の2大ECセールといえば11月11日の双11(ダブルイレブン)と、もう一つが今回取り上げる「618」です。
去年取り上げた時はコロナのリベンジ消費として注目され
中カツ!通信 第143号 EC2大イベント「618」と「ライブコマース」と「失敗」
EC第一位のアリババ系TMALLで6982億元(当時約10兆5300億円)、
第二位の京東で2692億元(当時約4兆600億円)
という凄まじい売上でした。
さて今年の数字はというと
京東で3438億元(約5兆8708億円)と約3割近くの伸びで最高売上を記録しました。
今年はiphone12、11の大幅値下げを始めとしてスマホ、家電、ノートPCの売上が特に好調だったようです。
一方、TMALLはというと6月18日0時から1時間の売上が昨年と比べて100%の伸びを記録したことは発表されましたが売上総額については、今(6月19日)現在発表されておりません。
その代わりに新しく発表されたのが以下の
「アリババ ゆで卵 ヒストリー」
10件の注文で消費される熱量が2005年からどのように変化してきたかという図になっております。
2005年には4個の卵をゆでられるほど排熱をされていたのが、2021年には1つのうずら卵を半熟にするほどの排熱にまで抑えられてきているというのを図で表しております。
イメージを活用して分かりやすくてうまい伝え方ですね!
昨年の618と比べて、天猫の1注文あたりの排出炭素量が17.6%削減されたという「グリーン経済」を意識した発表内容です。
アリババのこの発表は大きな意義があると感じています。
というのも中国のECセールは以前の
「1年で一番安い日」
と言えなくなってきていて消費者の意識も変化してきております。
以前は11月11日の双11(ダブルイレブン)、6月18日の618は確かに、他の日より安く買えるセールでした。
この日に買いそこねると「一億を損した」感じがするという言葉がネット上でよく言われていました。
ところが現在では旧正月前の「年貨節」、3月の「女人節」etc
と、毎月のようになんらかのセール中という状態です。
それに加えて有名KOLによるライブコマースはフラッシュセールであるものの、メーカーから好条件で仕入れているため価格も安いです。
実際618の預售(先行予約)として行われた李佳琦のライブコマースでは、25.65億元(約438億円)もの売上がありました。
出店メーカーへ自社以外のECプラットフォームに出店しない、安くしないなど強制をしていた行為が独禁法違反にあたるとアリババが約3000億円もの罰金を支払わされた件もあり、メーカーは各ECプラットフォームで出店もできるようになり、
「あのメーカーを買うなら、あのプラットフォーム」
という差別化が難しくなりました。
特に今年はショートムービーの2大巨頭 快手、抖音(Tiktok)の618ライブコマースへの本格参戦もあり元々、京東の創立記念日から始まった618も京東だけ見ていれば安く買えるという状態でなくなっているわけです。
値引きも以前の単純な割引ではなく、
「同一プラットフォーム内で300元買ったら50元値引き」
「事前に友達と一緒にゲームに参加すると割引券がもらえる」
など、複雑かつ買い物前から時間をかけないと安く買えないという状況になってきています。
これは消費者の立場からすると
「一番安いかも複雑で分からないし、時間かかるし面倒くさい…」
と感じてしまいます。
以前であったら11月11日、6月18日の当日は
「双11、618だから何かを買わなきゃ!」
という焦燥感すらありました。
今年の京東の618は名前こそ618のものの、実際のセール期間は
5月24日から6月20日と長期化しており、もう「ほぼ6」と呼んだほうが実態に近い状況です。
各ECプラットフォームとしては
「過去最高売上を更新!」
という至上命題のもと長期化、取扱商品の範囲拡大などが年々進行しております。
ただオオカミ少年の童話のように
「この日が一番安いぞ!みんな買っているぞ!買わないと損だぞ!」
に最初は過敏に反応していた消費者も、だんだんと理性的に
「欲しいものが欲しいタイミングであれば買えばいいじゃん」
と変化してきているのを感じます。
実際、今年は恒例のように行われていた
「ねぇねぇ、今年の618は何買うつもり?」
という同僚との会話もほとんどなかったです。
安さによる刺激で消費を拡大させることには限度があります。
「消費はお金を支払って行う投票である」
と言われるように、より自分の望ましい社会に近づけようとする企業の物が買われていく時代です。
それはメーカーだけでなく、ECプラットフォームも同じなのかもしれません。
「どうせ同じお気に入りの商品を買うなら、地球環境にやさしい、あのECプラットフォームで買おう!」
という具合に。
今後のECプラットフォームの差別化ポイントが値段や買い物の利便性だけではないところに、どんどん変わっていくのでしょう。
数年後のECセール前のオフィスでは
「今年の618は、どんな価値観に投票(消費)する?」
「今年の京東は300元分買うと50元分の炭素排出減らしいよ」
なんていう会話がなされているかもしれませんね。
本日も最後までお読み頂きありがとうございます。
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