第157回 ボッタくり?月餅それでも市場が拡大する理由とは
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第157回 ボッタくり?月餅それでも市場が拡大する理由とは
こんにちは。中カツ!通信の野村です。
10月1日から中国は8連休!
今年は中秋節と国慶節が重なったこともあり例年よりも1日多くなっています。
この季節、中秋節の食べ物といったらなんと言っても月餅。
この伝統の食べ物ですが、今では老舗の中国食品メーカーだけでなく各種レストラン、ホテル等の各種企業、そして、スターバックス、ハーゲンダッツといった欧米企業も参入している一大市場です。
もちろんスーパーでは年中買うことができますが、この中秋節の季節にしか食べない人がほとんどです。
この時期にしかとれない旬の素材を使っているわけではなく、お互いに月餅を贈るため食べる頻度が急上昇し、それ以外の時期は
「まぁ、わざわざ食べる必要ないかなぁ…中秋節の時、何個も食べたし」
という感じになっております。
日本でいうと普段は自分で買わないけどお中元の時期には水ようかんをよく食べるのに近いイメージでしょうか?
お中元の贈り物はいろいろな種類があると思いますが、それが水ようかんで統一されているようなのが中秋節の月餅です。その市場規模があるからこそスターバックス、ハーゲンダッツといった企業までも参入してきているのです。
今年のスタバの月餅ですと3種類あり、
2段重ね8個入りのギフトセットで458元(約7099円)です。
1個あたり887円(57.25元)とかなりのお値段です。
実際にスーパーで売っている月餅は上海で有名な老舗飲食、食品メーカーの杏花楼のものでも10元程度で買えます。
立派なギフト用の包装が追加されスタバ、ハーゲンダッツというブランドが付くと5倍以上の値段で取引されるということです。
もちろん、味や中身の素材によって原価の差はあるものの、価格差がここまで開くことは説明できません。
他の食品で他社との差別化をするために、よく見かける
「〇〇産の厳選小豆100%使用」
という説明も私はみたことありません。
主に月餅の価格差要因は
・ブランド
・包装の立派さ
・ギフト全体の大きさ、重さ
・味
という順序のような感じがします。
ブランドが大事なので各高級ホテルも立派な包装の月餅をこの時期だけ売り出します。
立派な包装で小鳥のオブジェまでついているグランドハイアットの月餅
組み立て箱を外して
二段重ねの箱に6個の月餅がはいっています。
一段でも十分なスペースがあります…
ネットで調べてみると338元なので、1つあたり1000円以上です。
原材料はどうなのかと商品表示ラベルをみていると
受託生産企業:宁波思维特食品有限公司
とあります。そもそも自社で生産したものでもないのですね。
確かに銀の紙箱をあけて、月餅を直接包んでいる袋や月餅自体にはハイアット独自のものとわかる表示はありません。
全く同じ月餅が他の包装で別の値段で売られている可能性ありますね…
ハーゲンダッツの月餅にいたっては、形が月餅なだけで中身はアイスですが贈り物用の月餅としては長年の人気です。
これらの例からブランドや包装が味よりも大事だというのがお分かりいただけると思います。
ただ月餅を持参し顧客回りをするという伝統的なスタイルではハーゲンダッツの月餅は溶けてしまうので引換券を贈り受け取った人が、交換しに行きます。
また、その他のブランドの月餅もこのように引換券で発行しているところは多いです。
それは持参、郵送するほうにとってかさばらないから楽という理由もありますが、受け取り側にとっても
「人前で大きな箱の月餅を受け取って目立ちたくない」
という理由がある職業というか業界の人は少なからずいますので…
また、この引換券で渡すのは、もう一つの効能があります。
ずばり換金がしやすい!
下の写真はあるパン屋の入り口です
収售 (買取、販売)月餅券という看板を出しているおばちゃんが座っていますがパン屋の人ではなく、ダフ屋です。
月餅の引換券を、この人達が買い取ってくれます。
今ではネット上での中古取引も盛んで、減ってはきていますが、まだ街中には健在です。
このダフ屋というのは各メーカーにとっては排除したい対象なのかと思っていたら、一部のメーカーにとっては実はありがたいグレーな繋がりがあるとのネット情報が…
例えば、このような循環ができているそうです。
1)メーカーが100元の月餅ギフト引換券を60元で卸業者に販売
2)卸業者から企業贈り物担当のAさんが80元引換券を購入します。
3)Aさんは普段からお世話になっている顧客先のBさんに贈ります。
4)月餅を食べ飽きていたBさんはダフ屋に50元で引換券を売ります。
5)メーカーはダフ屋からまとめて55元で買い上げます。
メーカー、卸業者、贈ったAさん、もらったBさん、ダフ屋のすべてが月餅を通じて得をしています。
ここで注目すべきなのは、月餅は実際には動いていないということ。
季節性の商品である月餅は生産予測が外れると売れ残ってしまうか、機会損失が発生します。
そして月餅を贈る人も、受け取る人も「食べる」のを主目的でやり取りしているわけでなく心とメンツが満たされれば実物が手に入らなくても問題ありません。
スターバックスをはじめ引換券の使用期限は決められていますので、実際に引換券の販売数と同じだけ作っていたとしても、一定の取りに来ない人がおりロスが発生します。
そう考えれば食材と過剰な包装のロスを発生させずに、皆の目的を達せいしているので地球環境にも優しいですね(笑)
月餅エコシステム
賄賂や贈り物に対しての規制が強くなってきて月餅市場も縮小傾向なのかとおもいきやファミリーマートでは去年から、KFCでも今年からオリジナルの月餅ギフト販売を開始しました。
そんなに儲かるのでしょうか?
確かに有名ブランドが販売する月餅は価格が高いため粗利が50%ととも言われていますが、ファミマやKFCでは知名度はあるものの贈り物という意味でのブランドとしては高級ホテルやスタバのような価格設定はできません。
中商产业研究院の2020年中国月餅業界の現状及びトレンド分析によると
(中文原題:2020年中国月饼行业发展现状及发展趋势分析)
2019年の月餅販売数は13.8億個、売上額196.7億元(約3049億円)と2015年から比べて50%近く伸びているとのこと。
実際に月餅を生産する企業の登録数も増えてきているとのことです。
確かに月餅を取引先へ贈る企業は減ってきているのですが、各企業で社員に福利厚生の一環として配布を続けている企業は多いです。
IT企業をはじめとした成長企業では社員向けにオリジナルの月餅を特注で作る企業も増えています。
例えばユニクロだと社員とその家族むけのメッセージが書かれた箱に
月餅と一緒に満月をイメージした形の旗艦店のイラストが描かれたライトが入っています。
そして月餅上の文字もオリジナルで
「世界第一」
という言葉も。
中秋節は中国では大事な節句の一つ。
満月は円満を意味しますのでメッセージ性のあるオリジナル月餅ギフトを配ることで社員の帰属感を上げるためのコミュニケーションになっています。
工夫を凝らした月餅ギフトは、社員がSNSで拡散することによって従業員採用にもプラスに働いているのかもしれません。
アリババ、テンセント、バイトダンスなどの注目企業が、どんな月餅ギフトを社員に配ったのか興味がある人は以下のリンクの中の写真をご覧ください。
2020中秋,十六家互联网公司月饼大比拼,猜猜谁更胜一筹?
https://baijiahao.baidu.com/s?id=1678699237385452885&wfr=spider&for=pc
でも、このように高級ブランドや各社特注品という差別化がされてきた中でKFCやファミマは、どのような目的で始めたのでしょうか?
粗利率が高い、既存商品とバッティングしないなどに加えてやはりブランドとしてのコミュニケーション強化なのだと思います。
KFCは欧米のブランドというイメージがある中で、中秋節の月餅という中国色が非常に濃いイベント向けの商品をだすことで、より中国市場に根差したブランドですよというメッセージの強化なのかと。
今回第一弾の月餅のパッケージは故宮という中国文化の象徴をモチーフにしたデザインにしています。
ファミマも以前紹介したことがありますが自社商品、自社キャラクターなどブランディングに力を入れております。
皆が注目する中秋節の月餅という露出が増えるところだからこそ、あえて自社オリジナル月餅ギフトを打ち出したのではないでしょうか。
ただブランド強化と売れるかどうかは別の話で、会社近くのファミマ店舗では発売開始から1か月でまだ4つしか売れていないとのこと…
中秋節が過ぎギフト用の包装から中身だけ出されてパン コーナーで売り始められることがあれば買ってみたいと思います!
本日も最後までお読み頂きありがとうございます。
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