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中カツ!通信

「中カツ!通信」は中華圏歴19年を超え、湖南省出身の妻と娘と上海で暮らす野村が「中国で勝ちたい人」のために、「日々ちょっと活力を得られる情報」を、お届けするブログです。

中カツ!通信 第179号 サイバー裁判でアリババが訴えられた驚きの金額とは?

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こんにちは中カツ!通信の野村です。

今回はオンラインサロンにも参加して頂いている弁護士の方から興味深い投稿を頂いたので共有させて頂きたいと思います。

 

「ネット法廷でアリババが消費者から訴えられた」

 

ということなのですが、

ネット法廷互联网法院)ってナニ?」

 

「消費者がアリババを訴えた理由は?」

 

と、いろいろ気になってしまいます。

 

まずはネット法廷ってなんでしょう?

 

ECやSNSなどオンライン上の活動が広がるにつれて多くの問題が発生しているのは紛れもない事実です。

 

被害者が実情をネット市民に晒して裁いてもらい、推定有罪となればネットの暴力(加害者の個人情報特定と流布、企業相手のサイバーアタック等)で制裁を加えるというものでしょうか?

 

ネット裁判は、そんな全員、裁判官気取りで言いたい放題の掲示板サイトでおこっているような裁判ではありません。

 

中国全土で3か所設置されている正式な裁判所です。

 

最初に設置されたのはアリババもある杭州(2017年)。その後2018年には北京、広州にも設置されております。

 

基本的にはオンライン上で進んでいきますので3都市以外の全国の裁判の原告および被告も3か所の裁判所を利用することが可能です。

 

北京互联网法院のサイトによると取り扱う内容は

https://www.bjinternetcourt.gov.cn/cac/zw/1536301521905.html

 

  1. ECによる紛争

  2. 契約、履行行為がいずれもネット上で完成したサービス契約の紛争

  3. 契約、履行行為がいずれもネット上で完成した金融、借入契約などについての紛争 

  4. ネットで発表された作品の著作権又は隣接権に関する紛争

  5. ネット上でオンライン発表、伝播された作品の著作権、隣接権を侵害して発生する紛争

  6. ドメインに関する権利の所属、権利侵害及び契約紛争

  7. インターネット上で他人の人身権、財産権などの民事権益を侵害して発生した紛争

  8. ECプラットフォームを通じて購入した製品の欠陥による人身、財産への侵害の責任判定紛争

  9. 検察が提起したネット公益訴訟事件

  10. 行政機関がネット情報サービス管理、ネット商品取引及び関連サービス管理等の行政行為を行ったことによる行政紛争

  11. そのほか、上級人民法院が指定したネット民事、行政事件

 

と、ほぼネット上で思いつくことは守備範囲となっています。

 

 

2020年8月31日までで22万件以上が受理され、オンライン申請率99.7%、オンライン裁判率98.9%、平均開廷時間29分ということで

オフラインの訴訟に比べ4分の1の時間ですんでいるそうです。

 

自宅から裁判に出廷できるってすごいですよね。

今回、教えて頂いたアリババが訴えられた裁判も

 


(画像は以下の動画からキャプチャーしモザイクは野村がつけました。

https://www.ixigua.com/6933151623334068748)

 

原告の若い女性の背景はかなり生活感があふれています(笑)

 

これらネット法廷以外にもコロナの影響でオンライン出廷が拡大しており、離婚等の民事裁判、刑事裁判でも行われているとのこと。

なので法廷に裁判官はいるものの、原告席、被告席そして傍聴人もいないというような裁判が頻繁に開かれているのですね。

 

今回、初めて知ったのですが中国では多くの裁判動画が公開されており、録画だけでなくライブ配信も多く傍聴マニアにとっては非常に恵まれた環境です。

 

トップページの上に「法廷ライブ1000万回突破」という文字が躍るHPは

以下でみられますのでリアルな中国の司法の現場を勉強したい方はぜひ覗いてみて、自分のお気に入り裁判を探してみてください。

 

中国庭审公開网 http://tingshen.court.gov.cn/live

 

今日の焦点として取り上げられていた裁判では始まったそうそうに裁判官から

 

「あなたと代理人がちゃんと画面にうつるよう、少し奥に座ってもらえますか?」

 

というようなビデオ会議に携帯で参加しているかのようなやり取りがなされていました。

 

動画の再生速度は2倍速まで上げることができるのも便利ですよね。

 

確かに利便性は高いものの、こんな顔が見えたり見えなかったりという状態で本当に本人だと保証できるのでしょうか?

 

確認はいくつかの方法があります。

 

訴訟が立案された後に裁判当事者はネット上の電子訴訟プラットフォームで実名、身分証明書認証をし、後に携帯に送られてきたショートメッセージでアクセスするというもの。

 

他に顔認識技術も使われており、プラットフォームに登録する際に自身のスマホカメラでうなずいたり、首を横に振ったり、数字を読む動画をアップロードします。これを公安局にある身分証明書のデータと適合させて本人確認をするというもの。そもそも国民の豊富なデータが管理されている中国だからできる方法ですね。

ところで、あの若い女性が口をとんがらせて、アリババを訴えた理由とはなんだたったのでしょうか?

「EC上の検索で入力したものと違うブランドの結果が表示されるから」

 

趙さんは、EC上で国美というメーカーの冷蔵庫を買いたいと思い、

 

「国美冰箱(国美冷蔵庫)」

 

と入力して検索ボタンを押しました。

 

その結果は、

 

「上位3つの表示結果は国美の冷蔵庫ではない」

「上位8つのうち国美の結果は4つだけ」

「スマホでアクセスすると、10のうち3つだけ」

 

これらは一般ユーザーがプラットフォームを信頼して検索しているのに、プラットフォーム側はメーカーごとに表示結果をコントロールしており消費者の一般期待に反するものでサービス規定に違約するものであると。

 

趙さんの要求としては、

「ネット法院が、このプラットフォームが提供する検索サービスは違約だと認めること」

 

「違約金として1元を支払うこと」

 

万とか億の単位を、間違えて消してしまったわけではなく1元です…

 

つまり金額請求は名目的であり、

 

検索結果表示のアルゴリズムが気に入らんから、法廷でそれを認めてくれ!

 

ということ。

 

 

この原告の訴えに対して、被告であるプラットフォーム側は、

 

「もし特定のブランドにとって不利益だとしても、それはプラットフォームと出店者側の問題であり、原告である消費者とは関係なく、原告は訴える資格がない」

 

と反論。

 

そうか…

 

趙さんは国美の関係者ではないんですね。とするとただの国美ブランドの熱烈なファンなのかなぁ…

 

気になる判決はというと、

 

「趙さんの請求を全て却下!」

 

となりました。

 

判決理由としてはそもそも「サービス規定」「プライバシーポリシー」に検索サービスに関する明確な基準が記載されておらず原告と被告のあいだで、今回の内容に関しての協議の一致がされていない。

 

あとは各人ごとに違う検索結果の表示も提供側のサービス範囲内だよねということが書いてありました。

https://baijiahao.baidu.com/s?id=1691202462440436614&wfr=spider&for=pc

確かにネットという比較的歴史が浅く次々と新しいルールがでてくる領域で、このように手軽に法的判断をしてもらえるのは非常に便利だと思います。

ただ便利なだけに、より多くの人が気軽に訴訟を解決手段として利用するとなると弁護士、裁判官といった人材は足りるのでしょうか?

そう思ったら北京にAIバーチャル裁判官が誕生という記事を見つけました。

 

現状では、裁判自体を担当しているわけでなく訴訟前の手続きを回答するAIのようですが、今後は実際には判決に関する情報を提供するAIもでてくると思われます。

 

AI裁判官の次は、AI弁護士も出てくるでしょう。

 

我が事務所はあなたの状況に応じていくつかの弁護士AIを用意しております。

 

世論の共感率85% 熱血正義感AI さよならナミダ君

死刑判決0%   命綱クモの糸AI スパイダーマン

離婚解決率90%  親身なのに直言AI Meのもんた

 

なんて、投資ファンドの運用AIみたいに選ぶ時代が来るかもしれません。

 

そうなってくると、裁判を起こす前に状況をインプットしてみてAI同士で裁判シミュレーションをしてみて、

 

「80%の確率で賠償金80万円を支払う必要があります。その他のコストも含めると120万円の費用が必要ですので、90万円の和解金での先方との調停をすすめます。それでも裁判を進めますか?」

 

というところまで現実になるかもしれません。

 

ここまで進んでしまうと、裁判の数も減るでしょうから裁判官や法廷弁護士が足りなくなるのではという心配も不要になるのでしょう。

 

そもそも、そのレベルまでAIが発達してこればネット上で人を侮辱するような書き込みなどは、行為自体が防止されてできなくなる可能性もあります。

 

監視カメラの普及とともに罰金や点数がすぐにひかれ交通マナーが一気に向上した中国。 

 

つまらない記事や炎上記事を投稿できる自由も今のうちだけかもしれません…

 

今のところ100%人が書いている中カツ!通信を、今後ともよろしくお願いします!

 

最後までお読み頂きありがとうございます。

 


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