第151回 TikTok、アリババ、小米創業者の最近の発言から思うこと
中国で勝つための、
ちょっと活力を得られる情報をお届け!
メルマガ無料登録URL
http://eepurl.com/c7GHF
□■□■□■□■□■□■□■□■□■
第151回 TikTok、アリババ、小米創業者の最近の発言から思うこと
こんにちは。中カツ!通信の野村です。
上海でも真夏日が続いており外に出て2分もすると息苦しくなってきます。さすがに今日の暑さの中、マスクをつけて外を歩いている人は見かけませんでした。
今回は中国だけでなく世界からも熱い注目を浴びている3人の有名企業の創業者の最近の発言について取り上げたいと思います。
1、TikTok(バイトダンス)創業者の張一鳴の「中国従業員への手紙」
2、アリババ創業者の馬雲「若者が見栄をすてて配達員をするのは素晴らしい」発言
3、小米(シャオミ―)の雷軍「小米10周年での講演」
1、TikTok(バイトダンス)創業者の張一鳴の「従業員への手紙」
まさに世界が注目している企業であるバイトダンス(字节跳动)の創業者 張一鳴が、この騒動の渦中で従業員にあてた2つの手紙の内容がSNSに拡散し議論をよんでいます。
概要が知りたい方は以下のリンクをご参考ください
+++++++++++++++++++++++++++++
1通目の翻訳が掲載されているBUSINESS INSEIDERの浦上早苗さんの記事のリンク
2通目の概略が書かれている36KrJapanJapanの記事リンク
2通目の社員向け手紙(中国語)が掲載されている中国经济网のリンク
+++++++++++++++++++++++++++++
この話題を取り上げたのは2つ言葉が印象的だったから
ひとつは2通目の手紙の中で3回使われている
「格局大,ego小」(器を大きく、エゴは小さく)
egoは日本語でも使われるエゴイズム利己主義のことです。格局は翻訳するのが難しいのですが「器」とか「視座」とかのイメージで、ここでは「エゴ」の反対語として使われております。
実際の文中では
「希望大家也不要在意短期的损誉,耐心做好正确的事。这也是格局大,ego小。」
(訳文)
従業員の皆が短期の非難を気にせずに、根気強く正しいことをやり遂げて欲しい。これも器を大きく、エゴを小さくだ」
という感じで使われています。
ふたつめは同じく2通目の手紙で2回でてくる「火星視覚」(火星からの視座)という言葉。
コロナで世界が協調しなければいけないと総論(建前?)で分かっていても、各国とも実際の行動がついてこないのが現実。
対立構造の渦中のグローバル企業CEOが自国の従業員向けに発したメッセージ、「火星から見たら」という表現は「格局」の大きさを感じました。
2、アリババ創業者の馬雲の「若者が見栄をすてて配達員をするのは素晴らしい」発言
2つ目はアリババ創業者の馬雲(ジャックマー)が8月10日のCCTVの番組の中での
「若者が見栄を捨てて快递(配達)業界に入るのは素晴らしいことだ。この業界に意義が出てくる。問題はない。数年前、北京大学を卒業して豚肉を売っている人が話題になったが、見栄を捨てて、自分を変革し、豚肉を売ることから学ぶことが、本当の北京大学精神だ」
という発言について
SNS上では、
「新コロナの影響で、失業を余儀なくされてしまった高学歴の人へのエールである」
という肯定的な見方から
「見栄を捨てて?デリバリー業や豚肉販売を見下しているのか?」
「そもそも捨てる見栄じたいがない。多くの若者の現状を理解していない」
という否定的な見方まで。
TikTokの張一鳴CEOの発言に対してもそうですが、中国のSNSを見ていると経営者が世論に与えるインパクトの大きさと受け取り方の多様さが分かって面白いですね。
3、小米(シャオミ―)の雷軍「小米10周年での講演」
最後は昨年2019年に日本にも進出した小米の10周年に際して、中国のスティーブ・ジョブズともいわれる雷軍の講演
主に過去の10年の節目となる出来事を回顧する構成で、本当は全部訳したいのですが時間がないので印象に残った点を3つだけ紹介します。
①「最初の1年の80%の時間は人材探しに使った」
携帯を作ったこともない雷軍が掲げた
「世界で一番よい携帯を、半額で販売し、誰でも買えるようにする」
“做全球最好的手机,只卖一半的价钱,让每个人都能买得起”。
という目標を達成するためには人材が欠かせません。
"三顾茅庐",找人要"三十次顾茅庐"!
「三顧の礼ではなく、三十顧の礼!」
「決心があり、時間さえかければ、良いチームを組成できる。」
ちなみに小米の2人目の社員である林斌は当時のグーグル中国の研究院 副院長です。
人材が見つからないと嘆く前に、自身が十分な時間と労力をかけているかを見直す必要がありますね…
②優秀な企業は利潤を稼ぐ、偉大な企業は人の心をとらえる
IPOを目前としていた武漢大学での講演の中で、雷軍は
「小米はハード製品のトータル純利は永遠に5%以上にしない。もし超えた時はユーザーに還元する」
という取締役会の決議内容を公開します。
多くの株主からは
「上場する直前に気が狂ったのか?」
「そんな話は聞いてない!知ってたら投資しなかった!」
と非難がよせられたそうです。
何回も開かれた緊急株主電話会議の中で、雷軍の
「優秀な企業は利潤を稼ぐ、偉大な企業は人の心をとらえる」
という一言で最終決着がついたそうです。
小米はアップルと同様に熱烈なファンが多く、携帯だけに留まらずテレビ、炊飯器、空気清浄機など多くの小米ブランドのIoT家電に囲まれて生活している人がいます。
コスパが良いというだけでなく、ブランド全体に流れる思想やストーリーが共感を得てこそ10年でFortuneのグローバル500企業(422位)になるまでの発展がされたのですね。
③技術、コスパ、クールが今後とも堅持していく三大鉄則
講演の中で小米ブランドで開発した炊飯器の話が紹介されています。多くの中国人がこぞって日本で高級炊飯器を爆買いしているのをみて
「中国は世界の工場と呼ばれているのに、なぜ良い炊飯器が作れないんだろう?」
というところから開発がスタートし同性能の日本炊飯器の5分の1の価格の商品ができあがります。
日本のTV番組の企画で
「小米の炊飯器と日本の炊飯器のどちらが美味しいか?」
というブラインドテストをしたところ6:4で小米の炊飯器が勝ったそうです。
私は実際に食べたことがないので何とも言えませんが、炊飯器も小米の日本進出商品第一弾の一つですから、かなりの自信がうかがえます。
まさに"米"関連商品ですしね(笑)
(でも、日本語の紹介文がいまいち…)
格安携帯や炊飯器の例からも分かるように商品に対する「技術」と「コスパ」について小米は本当に徹底しています。
クールに関しては今回発表された
世界初の透明な量産型OELD TV(49999元 約77万円)
が良い例だと思います。
「ハードウェア業界の無印良品」とも称される小米のデザインは白を基調としていて安っぽさを感じさせません。
これらの技術、コスパ、クールを今後も守り続けながら今後10年も
「時間をかけ長期的に価値のある事を行い、戦略上も地道で冒険をしない」
としめくくっています。
今回の雷軍の講演議事録をみていてソニーの設立趣意書を思い出しました。
(以下、ソニーHPから抜粋)
++++++++++++++++++++++++++
経営方針
一、不当なる儲け主義を廃し、あくまで内容の充実、実質的な活動に重点を置き、いたずらに規模の大を追わず
一、経営規模としては、むしろ小なるを望み、大経営企業の大経営なるがために進み得ざる分野に、技術の進路と経営活動を期する
一、極力製品の選択に努め、技術上の困難はむしろこれを歓迎、量の多少に関せず最も社会的に利用度の高い高級技術製品を対象とす。また、単に電気、機械等の形式的分類は避け、その両者を統合せるがごとき、他社の追随を絶対許さざる境地に独自なる製品化を行う
一、技術界・業界に多くの知己(ちき)関係と、絶大なる信用を有するわが社の特長を最高度に活用。以(もっ)て大資本に充分匹敵するに足る生産活動、販路の開拓、資材の獲得等を相互扶助的に行う
一、従来の下請工場を独立自主的経営の方向へ指導・育成し、相互扶助の陣営の拡大強化を図る
一、従業員は厳選されたる、かなり小員数をもって構成し、形式的職階制を避け、一切の秩序を実力本位、人格主義の上に置き個人の技能を最大限に発揮せしむ
一、会社の余剰利益は、適切なる方法をもって全従業員に配分、また生活安定の道も実質的面より充分考慮・援助し、会社の仕事すなわち自己の仕事の観念を徹底せしむ。
++++++++++++++++++++++++++++++
今回、3人の中国大手企業創業者の最近の発言をみながら
中国製品・サービスの機能や革新性だけでなく、その創業者の想いからも、もっと学ぶべきだ
と改めて思いました。
今回の記事が好評であれば今後とも商品・サービスの時事ネタ以外に中国企業家について紹介していこうと思います。
本日も最後までお読み頂きありがとうございます。
*****************
【Wechatでも配信始めました!】
メールが迷惑メールに入る、
そもそも届かないという方、ぜひフォローお願いします!
第119回以降のログもご覧頂けます。
中活通信アカウント
野村個人Wechat ID
是非、ご登録ください。