中カツ!通信 第268回 最高記録なのに非公開?双11セールの裏事情
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こんにちは。中カツ!通信の野村です。
皆さん、こんにちは。中カツ!通信の野村です。
今年も中国EC最大のセール双11(ダブルイレブン)が11月11日に終わりました。
ご存知の方も多いように2020年以降は11月11日だけでなく、10月下旬から双11が始まっているので実質的には約20日間のセールとなります。
毎年、その総取引額に注目が集まる双11(ダブルイレブン)
今年は、どんな驚くべき結果が出たのでしょうか??
今までの双11(ダブルイレブン)について復習してみたい方は、下記をご参照ください。
+++過去の双11(ダブルイレブン)関連記事+++
2021年
中カツ!通信 第216号 双11、9.6兆円で過去最高だけど、個人的には過去最低
2020年
中カツ!通信 第164号 双11 本当に、そんなにスゴイのか?
2019年
第109回 ジャックマーは詐欺師?売上記録は捏造か?W11と輸入博、オンラインとオフラインの2大イベント(後編)
2018年11月19日
W11の夢のあと。返品率30%?!
2018年11月11日
TMALL1日で約3.5兆円の売上!何故シングルデーなのにダブル11?
++++++++++++
復習も終わったところで、今年の結果について
驚くべきことに、総取引額(GMV)の発表なし!
EC業界最大手のアリババだけでなく、京東、拼多多といった、その他の大手EC企業も正確な数値についての発表をしませんでした。
ただ発表無し=売上数値が悪くて発表できなかったと考えるのは早計で、京東については、以下のように
「業界の成長率以上で再度新記録を更新」
という報告を出しています。
アリババも
「即使面对宏观环境的挑战及新冠肺炎疫情的影响,仍然录得与去年持平的商品交易额(GMV)表现。」
”マクロ環境の挑戦やコロナの影響があったにも関わらず、取引き規模は去年と同程度”という報告を出しています。
抖音(TikTok)、快手等の売上が昨年の双11(ダブルイレブン)から伸びているであろうところも含めて総取引額を発表していませんので、
今後、大手ECは
”双11(ダブルイレブン)セールの総取引額の成長率で注目を集めるのはやめよう”
という業界のコンセンサスができたのだと思います。
実は、約5か月前の618セールの時、618セールの創始者である京東は総売上額を発表したものの、アリババ、拼多多は総取引額を発表しませんでした。
中カツ!通信 第248号 低調なECセール618の結果から読み解ける中国経済とは?
その時に、すでに今回の双11の総取引額は非公開の流れができていたのだと思います。
総取引額を発表しなくなった理由は、
発表するメリットよりも、発表するデメリット(リスク)の方が大きくなったから!
さて、なんか凄い発見をしたような雰囲気で、当たり前のことを書いてみました(笑)
それでは、
今まで高い成長率の発表をすることで、どのようなメリットがあったのか?
について自分なりに考えてみたいと思います。
・投資家からは、成長著しい企業として資金調達がしやすくなる。
・企業からは「自社商品も売れるかも」と出店数が増える。
・消費者からは「多くの人が買う良いECプラットフォーム」とトラフィック(来客)が増える。
・政府からは「成長企業」として有形、無形の支援が得られる。
というようなことが考えられます。
一方で、成長率を発表するデメリットとしては
・低ければ投資家の期待に成長率が届かないと株価が伸び悩む
・低ければ企業からは「もっと成長率の高い売場を探そう」と広告資源が分散する。
・高くても、低くても消費者からは「プラットフォーム全体が、どんだけ成長しようが自分の生活とは違う世界の話」と現実を見せつけられてさめる。
・政府からは、その時の方針とずれていれば有形、無形のプレッシャーや責任を求められる。
などが思いつきます。
双11(ダブルイレブン)セールの総取引額という数値は、アリババ、京東といった各社の実績という枠を超えて、中国のEC市場の急速成長の象徴であっただけに、国内外から注目が集まります。
海外のメディアでは、この双11の成長率の高低を、他のもっと大きな経済の流れの象徴として話題展開をするところも少なくありませんし、慎重になる気持ちも分かります。
それでは、この双11の後で、各社は総取引額ではなく、どんなことを発表しているのでしょうか?
京東では、先ほどの「業界の成長率以上で再度新記録を更新」の後に続く部分は
農村振興
高品質の農産品ー消費グレードアップー農民増収のスパイラル
10万元(約200万円)の取引額を超えた農産品が約1万種
TMALLでも
・双11期間に10万回以上の村ライブコマースで農産品を販売
・11月7日までの3,549万件以上の農産物を販売、4.6万以上の農産物アイテムの取引額が昨年の倍以上となった。
「なんでECの大セールの発表で急に農村、農民の話がでてくるの??」
と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
それは「共同富裕」という昨年以来、更に注目を浴びているスローガンに関係しているからです。
Jetroアジア研究所の中国経済レポートに、ちょうど去年の11月11日に発表された総書記の重要講話の概要を紹介した記事の一部分を引用します。
(6)農民・農村の共同富裕を促進する共同富裕の促進で、最も困難で最も繁雑で荷が重い任務は、依然として農村にある。(中略)
農村振興を全面推進し、農業の産業化を加速し、農村資産を活性化し、農民の資産所得を増やして、更に多くの農村住民を勤労により富ませなければならない。
「共同富裕」における農村新興の重要性が分かりますよね。
他にも過去の発表でもみられた
「多くの中小企業が売上を伸ばし就業の機会が増えた」
「新ブランドが、今年1億元を超える売上を達成した」
といった出店企業がECドリームをみられるような内容も入っています。
ただ、「成功できる人から、どんどん成功していこう!」という成長段階をへて、開いてきた格差問題にも、ちゃんと対応していきましょうねという段階になったということです。
誤解なきように補足しておくと、「共同富裕」自体は、お金持ちになることを否定するものでも、過度な結果の平等を目指すものでもありません。
「企業は社会の公器」という松下幸之助の言葉もありますし、大手企業であるEC各社が率先して行動すること発表をすること自体を、
「何を隠しているんだ?」
と、必要以上に色眼鏡でみなくてもよいと思います。
様々なステークホルダーが含まれている社会へ発表するべき内容の優先順位が変わったということなのでしょう。
10年後の2032年に双11セールが続いていたとするならば、その時の各社は何を重大結果として発表しているんでしょうね?
「双11の期間中で地球の温度を0.03度冷やしました!」
なんて熱い成果報告がされているかもしれませんね(笑)
今回も、最後まで、お読みいただきありがとうございます!
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