中カツ!通信 第265回 密室内で金とストレスが上昇中!エレベータ―広告の謎
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大家好!中カツ!通信の野村です。
毎日、自転車で出勤しています。
朝陽を浴び、風を感じる瞬間は爽快感とともに
「今日も1日頑張ろう!」
という気持ちになります。
ところが、それもつかの間…
オフィスビルに到着しエレベーターに向かっていくと、エレベーターとエレベーターの間から騒がしい音が聞こえてきます。
5秒から15秒ほどの広告が、かなりのボリュームで流れているのです。
真ん中のエレベータに乗ろうと待っていると、両側から立体的に騒音が迫ってきます。しかも左右微妙にずれている時もあって、さらに不快。
やっとエレベーターに乗り込んだからといって逃げきることはできません。
むしろ、ボリュームは更に大きくなります。
エレベーターによっては4面全部が広告という時も。
ポスターのような静態広告に加えて、最近増えている音声付き動画広告。
写真のエレベーターでは4面のうち正面に2つ設置されています。
1つは扉横の音声付き液晶広告。
もう1つは、一見すると、ただのスペースなのにエレベーターが閉まると
ドア上部のところに音声付きの動画広告が始まります。
エレベーターが動いている時だけ背後に備え付けられたプロジェクターから動画と音声が流れる節電タイプです。
二つの別々の音声付き動画広告がエレベータという狭い密室で流れているので、音が混ざってしまいます。
聖徳太子でもDJでもないので、どちらの音声もよく聞き取れず、広告を通じての商品に対する好感というより、ノイズに対するイライラだけが残るわけです。
しかも、これらの広告の多くが洗脳式ともいわれる
ブランド名を、音楽にのせて連呼するパターンで
しかも若い男女が踊ったりしている目をひく動画が多いんです。
イメージが付きにくい私と同年代の方は
昔の
「武富士のレオタードで若い女性が踊る画面」
にあわせて
「ドンドンドン ドンッキ~ ドンキ~ホーテ~」
の部分だけが、ずっと流れていることを想像してみて下さい。
エレベーターに乗り込み、扉が閉まって逃げれない密室になってから上映開始の強制広告パワーは強力です。
大音量と注意を惹く動画に意識を持っていかれ、
「今、何考えていたか忘れちゃったよ…」
ということもあったりします。
なので、音声動画広告が設置されていない、荷物運搬用のエレベーターが同時に来たら、そちらに乗るようにしています。
私以外にもエレベーター内の広告に、イライラしている人は多いはずで、もし監視カメラが設置されてなければ、全国のエレベーターで毎日、液晶画面が割られているに違いありません。
もちろん今の時代、広告はエレベーター以外にも、そこら中に溢れています。
ただ何で、エレベーター広告は、他の広告と比べて特に不快に感じるのでしょうか?
それは、
強制的に踏み込んでくるのに逃げられないから。
というか逃げられないのが分かっているから、ドカドカと踏み込んでくる広告になっているということ。
テレビであればチャンネルを変えれば、
動画サイトでは会員費を払えば、広告をスキップすることができます。
また広告になったら目をそらすことも、画面を切ることも、音量を下げることもできます。
ところがエレベーター広告は、密室の中。
視線のやり場もなければ、目をつぶっても音声が押し寄せてきます。
それも、ただの音声ではありません。
何とか自分の存在をアピールし、私たちの記憶の印象に残ろうとする目的で作られた宣伝が5秒、10秒ごとに繰り返されていくわけです。
バラエティ番組で、新人のお笑い芸人が
「コンビ名だけでも覚えていってください。」
「記憶に爪跡を残したい」
とやるような、あくの強い一発ギャグを、心の準備なしに連続で見せられるようなものです。
ちなみに最近「爪跡を残す」を相手に印象を付けるという良い意味で使われているのを見かけますが、本来は、災害などネガティブな時に使われることが多い言葉です。
ただ、このエレベータ広告については「爪跡を残されている」という被害にあっている感がピッタリの表現だなぁと思います。
このように消費者に「マイナスの印象」を与えてしまうリスクがあるにも関わらずエレベータ広告が絶えることがないのは何故でしょう?
その理由は、3つの「やすい!」にあります。
1、記憶に残りやすい
2、費用が相対的にやすい
3、対象を絞りやすい
1、記憶に残りやすいについて
Kantarの調査によると、一人の人が平均的に覚えている広告の数は、
エレベーター広告が3.29個でトップ!
2位のSNSの2.48個より32%以上も多くなっています。
密室で逃れられないという、集中力が分散しにくい環境に加えて、記憶に残すことを目的とした広告内容になっているのも記憶数トップに影響しているのでしょう。
参考までに下から2番目が「雑誌・新聞」の0.8個、一番下はラジオの0.77個となっています。
2、費用が相対的にやすい
財通証券が調べた各広告チャネルのCPM(表示1,000回あたりの値段)の比較によると、
・Wechatのモーメンツ上に流れる動画広告でCPMが120元から、
・抖音(TikTok)のAPP起動時の広告が200元
に対して、エレベーター広告のCPMは40‐50元と数分の一の価格!
オンライン広告の値段が上がっていく中で、相対的にエレベータ広告の値段が安くなっているんですね。
3、対象を絞りやすい
エレベーターはマンションもオフィスも特定の場所を指定することができLBM(Location Based Marketing)の手段として有効です。
レストランなら、お昼休みの時間帯に、店舗半径500m以内のオフィスビルにだけ自店舗のランチ広告を流すなんてこともできます。
これら、3つの
1、記憶に残りやすい
2、費用が相対的にやすい
3、対象を絞りやすい
という特徴がゆえにエレベーター広告を出したい企業が増え、
そのニーズに対応するため広告場所が増え、エレベーターの中に広告が溢れていくという状況が起きています。
エレベーター広告を扱う企業も200社を超え、2021年にも5%以上増えているとのこと。
まさに、まだまだ上昇中なのです!
ただエレベーターは上に行けば、必ず下に戻ってくるもの。
エレベーター広告が下がってくる可能性についても考えてみましょう。
1、エレベーター広告が直接の購入に繋がっているのか不明
Wechatモーメンツ、抖音の広告がクリックすれば、詳細商品ページに移動し、そのまま購買行動につながるのに対して、エレベーター広告は、その場で次の「検索」や「購買」といった行動に繋がりにくいです。
ブランド認知が上がったからといって、「あのウザい広告ね」となれば購買に繋がらない可能性もありますし、そのことが検証しにくいというのが欠点です。
2、「うるさい!うざい!」と住民が反対する
認知を広げたい広告主である企業、広告スペースを貸し出すことによって収入が増えるビルマネジメント会社(物行管理)というメリットは、
消費者がエレベーターで強制的に広告を見せられることにより成り立っており、これは消費者の権利が侵犯されているとも言えます。
昨年から施行されている民法典では、エレベーター広告スペースの貸し出しによる収益は部屋オーナーも共有すべきということが明記されました。
物件法70条の物件オーナーはエレベーターを含む共有スペースの管理発言権があるという条項とあわせて、エレベーター広告に対しても住民側の意見が取り入れられていく可能性が上がってきております。
物行管理費を値上げしてもよいから、エレベーター広告を撤去してくれという住民合意ができあがるマンションも出てくるかもしれません。
70年前の動画コンテンツ自体が珍しかった時代であれば、テレビコマーシャルだって皆が食いつくように観ていたのでしょう。
その当時の人は、今の
「お金を払うから広告を見せないでくれ」
という時代を予測出来ていたのでしょうか?
お金と時間をかけて広告をつくる企業がある一方で、
お金を払うから見せないでくれという消費者がいる。
みかじめ料を払うと、迷惑(暴力)ごとから守ってくれるなんていう構図を思い出してしまいました。
誤解なきよう書いておくと、私自身はどちらかというと広告を見るのは好きな方で、広告自体を否定しているわけではありません。
ただ、私が見てきた一部のエレベーター広告が苦手というだけ。
自分の目的の階についてもエレベーターを降りたくなくなるような広告があれば、ぜひ紹介して下さい!
また今回のWechatでの配信記事の文章中には広告が表示されない設定にしました。
今回の記事の「いいね」や「投げ銭」が増えていたら、今後もWechat記事内の広告表示を減らそうかと思っています(笑)
今回も、最後まで、お読みいただきありがとうございます!
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